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評価:
天童 荒太
文藝春秋
¥ 1,700
(2008-11-27)
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読んでいる間、そして読み終わってしばらくたった今も心がひどく穏やかでなんとも言えない心でいる自分が不思議。
静人は死者が「誰に愛され、誰を愛し、誰に感謝されたか」を聞き悼しむ。
全国を回るうちに誠実であろうとするあまりに苦しむ。
彼がなぜ死者に獲り付かれたように旅を続けるのか。
彼はどのように人にうつるのか。
彼の家族は彼をどう思っているのか。
私は母だから「母」に目がいく。いってしまった。
私にはできるだろうか、という不安。私は「生きる」方へ息子を導くことができるだろうか、と。
息子だけじゃなく夫に対しても友人に対しても思う。
けれど何より息子についてそう思った。
それだけ「母」の存在が大きく感じたんですよね。
息子が「死」をそして自分のことを「必要のない人」と思って生きることだけは嫌。
一瞬でもそう思ったのではと思っただけで胸が痛くなる。
「そんなことはもっと早く言ってよ」と美汐が母に言う場面が頭に残ってる。
息子が生まれて私はようやく自分が必要な人間なんだと思えた。
それまで怖かった。寂しくて不安で。愛した人もいるのに家族もいるのに。
わたしがわたしを愛せない。
弟なり妹ができても息子が思わないにはどうしたらいいんだろう。
わたしのように思わないようにするにはどうしたらいいんだろう。
身元不明の女の人の身元が判明するところとか好きではない箇所がいくつかあるんです。
あの歌はその地方独特のものではないなぁとかこんな綺麗な話でまとめられるの?って正直思う。
でも彼のような人がいると思うと不思議と心が暖かくなる。
物語なのに独りじゃない気がするんですよね。
あぁ、だいじょうぶって。
救急車が走って手を合わせているのが私だけじゃないんだと思って。
それもなんだかうれしかったなぁ。
こんな人いないかもしれないけどこの本を読んだ人は読む前より誰かを悼んで祈ったりするんではないかなぁ。と心があったかぁくなるんですよねぇ。