宿命
東野 圭吾
「晃彦、申し訳ない、よろしく頼む」
そう息子にいい残して亡くなった瓜生直明。
彼は何を息子に託したのか。
勇作が小学入学式前のある日サナエが突然死んだ。
彼はサナエとの思い出の場所である少年に出会う。どんなに努力しても勉強も運動も勇作は勝てない。絶対に負けたくなかった。何故か気になって仕方がなかった。サナエの死が気になりつつも彼は成人し警察官となる。
そして彼はあの少年と再会する。彼・・晃彦の父が所有していた会社の社長が殺された。凶器は晃彦の父の集めていたコレクションのひとつだった。
知っているのは好きな食べ物と嫌いな食べ物、今日のスケジュールの一部。精神的な力になりたいのに・・。今悩んでいること、望んでいること、夢見ていることを知りたいのに。
夫に対してそう思っている女性は何人くらいいるんだろう。
晃彦が妻である美佐子に心を見せられなかった理由。
部屋に鍵までつけてしまった理由。
胸が締め付けられそうだった。
これほどのことを一人で抱えてきた彼にそしてそれを「宿命」と言い切って人生の殆んど犠牲にしてきた彼の心。
私は恋人に心を求める。美佐子と同じ気持ち。解ってもらえずに嫌になって家を飛び出したこともこんな関係やめるって言ったこともいっぱいある。好きな人の心を理解して一緒にがんばりたいって思うのはおかしいのかな?晃彦のように理由がないくせに見せない男っていっぱい。それって寂しいことだと思う。誰よりも解りたいと思うのに解らせてもらえない・・・。
諦めずにそんな彼を解りたいと思い続けた美佐子はすごいと思う。それに応えるかのように変わり始めた晃彦も。
出てくる人出てくる人が犯人に見えた(笑)まったく関係がないだろうとおもっていた事がとても重要だったり重要だとうと思っていたことがまったく重要じゃなかったり・・・東京からの帰りはこの本のおかげであっという間に富山に着きました。珍しく酔いもしなかった。
「ここまで読んだことが全部、ものすごく「納得」できる一行だった。」という言葉に惹かれて読み始めたこの「宿命」。ずるをして途中に読んじゃったけど意味が分からなかった。なのにちゃんと読み進めていくと不思議。
ずっと暗い霞がかかったようなイメージがすぅっと晴れて突然明るくなった。
世の中には美佐子がいうような「糸」がいっぱいある。たまたま美佐子の「糸」には正体があったけれど世の中には正体のない「糸」で溢れていると思う。私が彼とであったのも、私がこの本と出会ったのも全て「糸」。いつかその正体が分かる日がくるのだろうか・・・
そして「宿敵」。
あなたには「宿敵」いますか?
わたしの「宿敵」は両親。似ているからこそ腹が立って仕方がない。自分が隠したいと思っているところが隠しもせず目の前に出されている。けれどあんな親にはなりたくないと思う面がこんなに多くあるにも関わらず私はとても尊敬している。いつか超えることができるだろうか・・いや、超えてみせる。絶対。