天使の卵(エンジェルス・エッグ)
村山 由佳
大きく息を吸い込み、ゆっくりと吐き出す。そして僕は、こわれものを扱うように、そっとクロッキー帳をひらいた。
そこには、春妃がいた。
どのページにも、どのページにも、春妃があふれていた。
富山は今桜が満開。
桜と重なる作品。皆さんはどんな作品をあげますか?
歩太は美大か普通大学か迷ううちに両方の大学から不合格を突きつけられる。働こうとする歩太に居酒屋を経営する母は浪人生活を勧める。父は現実と理想の狭間で精神を壊し現在精神病棟で10年目の日を過ごす。そんなある春の晴れた朝。ラッシュでもみくちゃになった電車のホームで彼はひとりの女性に出会う。無彩色の中で彼女だけが凛としたたたずまいと色調をそろえていた。
初めて知ったのはラジオ。NHKのラジオ小説だったと思う、夜10時45分くらいから始まる番組がとても好きでそれが毎晩の楽しみだった。そのラジオから流れてて未だに忘れられない一節。今日まで読めなかった。萩原聖人が声を担当していたと思います。この1節に心が震えて体中に電気が走っった。イメージがあまりにも強く残りすぎて未だに読めなかった。
舞い散る桜と女性のゆっくりと微笑む顔、泣いた顔、ちょっと怒った顔、手、緩やかな曲線を描く身体。
画像を見ているわけではないのに頭と心に広がった世界
昨年出版された続編「天使の梯子」は読むことができた。ならばこの作品も読めるだろうと・・・。
あの頃から私は様々な恋愛や友情やあの頃あこがれていた事をやってきた。
けれど不思議。この作品を読むと私は一気に高校生だった初めてこの作品に出会った頃に引き戻される。漠然と子供を持つことや彼氏を持つことや彼を受け入れることを考えていた頃に。
私は確かに昔の私の上に成り立っているって思わされる。
村山さんの作品はどれもこれも色がきれい。
鮮やかなその色彩に春の季節には春、冬には冬の季節が味わえる。
何度読んでも何度感じても素敵な作品。
ちょうど一番多感な時期に村山さんの作品を何度も読みすぎたせいか私がイメージする男性は村山さんの作品にでてくるような男の人が多くて違う反応をする人だとえぇ?って戸惑ってしまうことが多かった。まだ、恋に恋していたのかなと思います。今もまだそんなところ残ってるけど。
本は本で大切だけどやっぱり体験する、って大切。昨日のブログで「子育てしてないあなたにわからない」ってことについていろいろ書いたけれどやっぱり分からないかも。分かりたいのだけど・・なかなか。(それが一番悔しい)ちゃんと聴かないとだめだなぁと。聞くじゃなくて聴く。その人の状況をちゃんと理解してその人の心にそっと添ってみる。自分の考えじゃなくてちゃんとその人になってみる。そんな人でないと相手も自分には何も言えないかもしれない。自分だって色々と悩んでいる時そうだった。自分に精一杯の時は誰かに相談するってこともできなかった。というか考え付かなかった。それにそれは違うって言われるのも怖かった。
この作品男の方にもぜひ読んでもらいたい。少しは女心わかるかもしれませんよ?