満潮
M.ウェズレー, 河野 万里子
生きたい?
マチルダは少しづつ準備をしていた。バターとロールパンとブルーチーズと桃とボージョレーを持って彼女は海岸を目指す。満潮のその日。全てを波に任せさえすればマチルダの願いは叶えられるはずだった。傷つき放浪する彼女はひとりの男性と出会う。車のライトで照らされたその顔は母親殺しで警察に追われていた殺人犯だった−
「魂萌え」を思い出させる内容だった。
夫の死後どんどん突きつけられる現実。違うのはラスト。魂萌えでは夫から独立し前を向いて歩いていくのに対し死を選ぶ。
現実−
夫が自分の友人と寝てた
ホモだった
スパイだった
麻薬の密輸をしてた
とか・・・・いろいろ
夫を失いたくなくて娘との浮気を問い詰められなかったマチルダ。
目を瞑っていれば夫を失わずにすむなんて−
どうだろう?
私だったらと考えてみたけれど解らなかった。どっちの気持ちもあることは確かなんだけど。考えたくないって気持が強い・・。
愛してるってなんだろう?
誰にも頼りにされない
物事が自分抜きで進んでいく
邪魔者ではないかって感じる
それならいっそ−
誰かのためにも生きなければいけないっていうのは苦しいかもしれないけれど実はとても幸せなことなんだと思う。
わたしは考える。
深く深く考えてた死。
70歳の作者が描く不安。死。
2人の祖母がずっと頭に居た。
「こんなに長く生きてごめんね」って言った祖母。
こんな言葉は聞きたくない。言わせたくない。祖母にも誰にも。
2人ともから聞いた。聞きたくないのにっ。
もしかすると生きることは彼女たちの望みではないのかもしれない。
だけど私は生きたいと思って欲しい。何かをしたいっと思ってほしい。
わたしに何ができる?
わたしだったらどう思うだろう?
彼女は死を殺人者は生きる道を選んだ。同じ時期に自殺に失敗した二人。
深刻な話なのに動物たちのおかげで明るく日差しの中を歩いているような気持ちで話は進んでいく。あなたからどちらを選びますか?
「私たちはただ一生懸命生きているだけで誰かに生きる勇気を与えている。」そういった石神(容疑者Xの献身)の言葉が胸に刺さる作品だった。