東京島
桐野 夏生
もしも自分も清子のように夫と無人島に流れ着いたら初めのうちは落ち込む夫を励ますように明るく振舞うだろう。元気に引っ張っててくれるならよし、でも清子の夫のようになりさらに自分をちやほやしてくれる男達がたくさんいればそっちに寄り添い夫に連れなくしてしまうだろう。寂しいだろうな。頼りたいのに頼れないから。
「男なんて」って馬鹿にしたいわけじゃない。男の力無しでは生きていく事も無人島から抜け出す事もできないのもわかってるから。ただ馬鹿にされたくないから馬鹿にして生きていくような気がする。
読んでいる間寂しくて自分の心の嫌な部分が、封じ込めておきたい部分が出てきてるようで読みたくない、だけど続きが気になる、かなり大変な話だった。
ほんだらけの「uririnさんはどっちがわの人間だと思いますか?」へのuririnさんの返事の意味が未読の私にはわからなかった。単純に生きるために動くホンコン側と文化を大切にするトウキョウ側のどちらかって聞いたつもりだった。読み終えて改めてuririnさんの返事に考えさせられた。確かに難しい質問かも。考えても考えてもそんな状況におかれた自分が想像できなくて。ラストの選択をする自分を想像するのさえ心が拒否していた。どちらになるか私も答えられない。
死ぬ間際にたっぷりの苺ジャムを塗ったトーストが食べたいと日記に綴っていた清子の夫。おもわずよだれが出た。それくらい強烈に食べたくさせる描写だった。
当たり前だけれど自分の人生では自分が主役だけど息子の人生では私はプロローグでしかないように本当の主人公はプリンセスとプリンスなのではとか思ったくらい今後を想像したくなる終わり方だった。