とん、たたん、とん
目をつむって
意識をまかせて
空はまーっすぐに高く黄色くただっぴろい暖かな大地が広がってた
理想のねこの泣き声を出せる「ねこ」
とにかく耳のいいおじいちゃん
頭の中が数学のことで埋まってるお父さん
こっちへよろよろあっちへよろよろ用務員さん
目が見えない耳のよいボクサー
売春宿へ通う目の見えないチェロ奏者
オムレツに込められた思い
みどり色
赤
ねずみたち
クーツェ
童話のような話。心から幸せな気持ちになれる1冊。
小さな子供の頃両親とレコードで童話を
祖父母からお釈迦様の話を
毎日毎日朝も昼も夜もせがんでは聞いていた頃を思い出した。
なにもかも失った吹奏楽団。
タクトは麦わら、チューバは自分の喉。楽器は子供用のタンバリン、リコーダー、古い洗濯板・・・
こんな気持ちになるなんて思わなかった。
落ち込んでいるおじいちゃんにこれらの楽器を持って呼びにきた時心が震えた。
「降った雨は空へ戻せない。ひとはなにかをなくせばなくなったそこからしかやっていくほかない」
好きな男の腕で死ねることを夢見ていたけれど、自分で作った料理のあまりのうまさに死ねるのもいいな。周りの人もみーんなきっと笑えるもの。最後まで笑える奴だったって言ってもらえる。馬鹿な奴だねーって笑われながら死ぬのもいいなぁ。折角だから泣くより笑ってもらいたい。
私のおじいちゃん、どうしても食べたいっておばあちゃんに買いに行かせてまで食べた餅を詰まらせて死んだんだ。おじいちゃんもきっと生まれかわり男やおばさんのように最後の居場所を予感してたのかな。
ねぇ、おじいちゃんその時どんな音が聞こえた?
わたし、こんなに大きくなったよ?
わたしは目が見える
目が見えるからこそ見えないものがいっぱいあるはず
目をつむって
耳をすませて
「熟練のティンパニ奏者のように、ぼくは待つことを学ばなけりゃいけない。へんてこ呼ばわりされても、けっしてばちを捨てず、ステージのいちばんうしろでじっと立っていること。そのときをきき逃さぬよう、ちゃんとみみを傾けて」
麦ふみクーツェ