死日記
桂 望実
−子供を授からないのはとても辛い。
だけど・・・・子供が突然いなくなるのも辛いもんだよ
明るく だけどきっぱりとその人は言った
少年の母陽子はこれから先この気持ちに気づくことがあるだろうか?
少年は中学3年生。
普通の中学生。つい最近父を亡くした。酒を飲むと際限なく暴れる父。ギャンブルが好きで働かない。こいつがいなくなればどんなに幸せだろうと思っていた。そんな父が多額の保険金を残して死んでくれた。やっと母と2人、これからは平和な生活が過ごせると思っていた。なのに−
桜が散り急ぐ春の日に私は話を聴いた
子供の頃のこと。電気を止められたり給食費が払えてなかったり借金取りの相手をしたり。聞いた後何を言ったかは覚えていない。ただ闇夜にうかぶ桜をよく覚えてる、その人のことをもっと知りたいと思った。話してほしいと思った。そうすれば少しでも近づけると
主人公の少年もまた電話を止められたり水道や電気の催促状を受け取ったり
借金取りの相手をしたりする。誕生日に家に帰っても家には誰もいない。冷蔵庫にはチーズ一枚。母はきっと男と出かけてる−
読み終えて思った。私には一生解らない
話してほしいなんて思ってた私がバカだったと
こんなの思い出したくもないと思う。必死で生きてきた人の過去を根掘り葉掘り知りたいと思った自分が恥ずかしかった。何いい気になってたんだろう・・・
少年の周りの人々。少年が出会い話し親しくなった人たちの優しさがそのまま少年の心を現してるように思う。半分しか使ってないノートを探しに焼却炉の横にあるゴミ集積容器をあさる少年を怒るでもなく「探しておいてあげるからと明日おいで」と。表紙に色紙まで張って渡してくれた用務員のおじさん。友人の小野。担任の先生。泣きたくなった
なんで少年はあんな母のもとに生まれなければならなかったの?
母の愛情は怖い。先日読んだ「14階段」の母もそう感じた。私はその愛情を羨ましがってもいる。子供のためならなんでも出来てしまうという親に。だけど・・。
理性と情。
子は親によって大きくかわる
私たちはどんな親になれるだろうか?
戸田の妻の言葉に胸がつまった。「産めない女は罪人なんですよ。昔っから刷り込まれているんです。きっと遺伝子にね」私はいつか自分を赦せるだろ
うか?
親は子が思うよりずっと子を愛してると思う
だけど子も親が思うよりずっと強く親を愛してるんじゃないだろうか?