生まれる森
島本 理生
この本をあの時。自分が自分ではなくなってしまったようなあの時に読んでいたらきっと読みきることができなかったと思う。主人公と同じようにどうにもならないくらい憧れて惚れて・・けれど彼に近づけば近づくほど自分が壊れていくのもわかっていた、あの頃。
−テントが当たったから一緒にキャンプしない?
夏休みの間だけ友だちのアパートを貸してもらえることになった主人公。
ちょうど両親と気詰まりな時期だった。複数の男と寝て子供が出来て堕ろした。友人のアパートに住み始めたある日高校時代の友人から電話があった。
そうしてこの電話から彼女と友人の家族たちとの交流が始まる。
生きているのに死んでいるようなそんな主人公と自分の楽しいと思うことをして生きている友人の家族の対比が強い。友人にだって家族にだって深い闇の部分はあって必死にもがいているかもしれないけどそれが表面に出ない友人たちはカッコいいなぁって思う。私から見るとこの家族はそのまま今暮らしている家族と重なる。母と弟と夫。とにかく明るい。夫に以前聞いたことがある。−なんでそんなに強いの?なんでそんなに自分に自信があるようにみせられるの?
最近思う。まず自分を愛そうって。自分がどうしたいかまず考えよう。それができたら他の人のことも考えようって。とりあえず自分。自己中心的かもしれないけど自分を愛せない人が他人を受け入れることって難しいじゃないかなって思うから。他人を救うことはできない。どんなに大切な人でも救えない。ただそばにいること、話を聴くこと、これだけしかできない。助けることはできないんだよなぁってこの本を読んで改めて思った。わたしは手放すんじゃなくて手をぎゅっと捕まえていたい。ひとりじゃないからって。
全部終わってしまったことなのにどんどんどんどんダムが決壊するように心の中に繰り返される思い出と後悔。主人公もことあるごとにサイトウさんとの思い出が押してくる。友人と食事をして幸せだと思った矢先に思い出して落ち込んだり・・・。そんなもんなんですね。私だけがおかしいんだと思ってました。人って辛いけどこれをしない前を向けないのかもしれませんね。
私はやっと彼と出会えたことをよかったなって思えるように最近なった。
今、苦しんでても絶対その森は抜け出せる。その未来が同じ繰り返しでもそれはやっぱり新しい未来だと私は思います。
なんとなく、そんなことを書いた本に私には思えました。