軍旗はためく下に
結城 昌治
日本国内での戦争の悲惨さと残酷さを書いた本や番組を目にすることはあったけれど外地で戦った人の話を読むのは初めてだった。回天や神風特攻隊といった戦死した人の話ではなく外地で戦い餓えたり病気になったり、こんな刑があってもいいのか?って思うような刑により死刑執行された人、いわゆる戦死ではない人たちの話。
なんともいえない暗い、残酷な、人の奥に潜む暗い部分を全部だしたかのようなそんな場面が何度も何度も描かれている。ばかなと思うかもしれない、だけどこの本を読むと日本は腐ってたとしか思えなかった。戦争を起こした人間が悠々と生きて巻き込まれてしまったとしか思えない一般人がどんどん殺されていく。戦死ではない。餓死と病死と死刑によって。
この作品が書かれたのは昭和45年。まだ高度成長時でベトナム戦争があった頃ではないかなと思う。ベトナムに旅行した時に訪れた戦争博物館。それはひどいものだった。残酷なまでに現実を突きつけられた。顔が腐ってる人、拷問で死んだ人。これはもしかしたら戦時中の日本と同じだったのではないだろうか?その時にみた映像とこの本の文面が一体となって私を襲う。
戦後60年。私は戦争を知らない。だけどだからこそ戦争を美化する年代でもない。国のために戦って死んだ人全部が靖国に入ってるわけじゃないということも知った。戦争の事を語るにはもっともっと多くの事を知らなきゃいけない。そしてひとりひとりがどうしたらいいか考える機会が必要だと思う。学校では教えてくれなかった戦争の生々しさがこの本には描かれていた。
小説だと思う。けれど本当に小説なんだろうか?